ライブコマースについて
ライブコマースとは?
動画のリアルタイム配信(ライブ配信)は近年世界的に広く浸透しており、日本でもInstagramやTikTok、youtube、Facebookなどで、様々な人がライブ配信しているのを見たことがあると思います。
「ライブコマース」は、このライブ配信で商品やサービスを分かりやすく解説し、売り手であるライブ配信者と買い手である視聴者がリアルタイムでコミュニケーションを図ることができる、ECの新たな形態のこと言います。
出典:shutterstock
従来のECは、商品についての説明や画像、レビュー等によって購買意欲を刺激し購買を促すことが主な手法でした。
しかしライブコマースでは、配信者であるライバーが、実際に商品を使用した感想や使い方の実演をライブ配信で紹介できる他、今まで消費者が見ることができなかった食品の生産地・鮮度など消費者の関心が高いポイントを直接確認することが可能であるため、購買意欲をかき立てやすいという特徴を持っています。
そのため、ライブコマースと相性が良く、扱われることが多い商品としては、「食料品」・「衣料品」・「化粧品、美容関連製品」・「日用品」・「スポーツ用品」・「家電」・「インテリア」など、実際に商品の感想を聞くことができるものが多い傾向にあります。
出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課『令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)』
ライブコマースはBtoCでのEC業界トレンドの1つで、コロナ禍以降日本でも徐々に盛り上がりを見せており、今後も市場規模の拡大が見込まれています。
ライブコマースの市場規模
ライブコマース市場が発展している中国では、2018年時点で約1,000億元(約1.6兆円)に上ります。
また、コロナ禍以降に大幅に増加しており、2021年ではオンライン小売業の15.1%を占める2051億元(約3.4兆円)規模まで拡大しました。
その後も成長が見込まれており、将来的は中国での小売業の約24%を占める市場へ成長する見込みとなっています。
ライブコマースのメリット
①実店舗に比べ商品の値段が安い
ECでは商品を販売する際のテナント代や流通費用が安価のため、実店舗での販売やテレビショッピングに比べ、商品を安く販売することができるというメリットを持っています。
ライブコマースではこのECの利点を持ちつつ、演出の一つとして配信中限定の値引きやキャンペーンを行なっているケースもあるため、通常のECよりさらに安く商品を販売することができます。
②実店舗での接客と同様のコミュニケーションが取れる
従来のテレビショッピングのような動画での商品紹介とは異なり、ライブコマースでは視聴者からの質問等のコメントをリアルタイムで返答することができるため、オンライン上で実店舗の接客と同様のコミュニケーションを取れます。
これにより、ニーズに沿った商品の魅力や使い方を詳しく伝えられますし、ちょっとした悩みや不安を解消することができるので購買意欲をかき立てることができます。
③新規顧客の獲得が見込める
ライブコマースは従来のECと比べエンターテイメント性が高く、影響力のある配信者(インフルエンサー)とコラボレーションすることで、これまで獲得できなかった顧客層へアプローチすることができます。
インフルエンサーとのコラボレーションによるライブ配信を行うことができれば、そのインフルエンサーのファンから視聴してもらうことができるので、商品の認知度を一度の配信で大きくすることができます。
また、配信者の人柄を気に入ってもらうことで商品の印象も良好になり、多くの顧客にアプローチすることが可能です。
特に、SNSで日常的に動画を視聴している若年層にとって、ライブ配信と似たライブコマースに参加することは、実店舗に足を運ぶのに比べてハードルが低く、視聴者が直接消費者になりえるのでスムーズに多くの集客が見込めるのも魅力です。
④商品開発への効果
ライブコマースでは、その視聴数や商品に対するコメントから疑問や不安などの要望を得ることができます。また、購買意欲のある消費者からの生の声を聴くことができるため、その後の商品開発やマーケティング戦略の参考にすることができます。
さらに、どのような層に興味を持ってもらえたか、またそのうちどのくらいが購入に至ったかを知ることができるので、購買層のデータを得ることができます。
ライブコマースのデメリット
①偽物や粗悪品の流通
ライブコマースは個人のライバーでも参入することができるため、その敷居の低さが問題視されています。
また、有名なライバーが配信しているからといって、必ずしも良いものを紹介しているわけではなく、消費者のミスリードを利用した悪質な販売が多いことから、関連した法律の整備が急務となっています。
②配信者によるイメージダウン
ライブコマースは、ライブ配信のため他の視聴者の様子も伺えることから、いかにライブ配信を盛り上げていくかによって視聴者の購買意欲も変わってきます。
自社の社員でライブ配信を行う場合は、事前にSNS等で告知をすることやフォロワーを集めることが重要ですし、魅力を上手く伝えられるよう事前準備が必要不可欠となってきます。
社外のインフルエンサーに依頼する場合でも、商品の知識や理解は重要になってくるので、入念な打ち合わせが必要です。
これらの事前準備を怠ることでライブ配信の失敗や商品のイメージダウン、顧客の離脱につながる可能性があります。
今後の展望
今後のデジタル技術の進歩により、VRやARを用いた臨場感のあるライブコマースなどが考えられます。
また、日本ではまだあまり流行していないライブコマースですが、中国以外にもヨーロッパ圏でライブコマースが注目されていることから、ライブ配信のグローバル展開も考えられ、より大きな市場となる可能性があります。
しかし、ライブコマースが流行した大きな理由の1つに、コロナ禍での外出規制があります。
徐々に緩和されていく規制の中、消費者がどのような購買活動を行っていくのかが今後重要視されています。